クレーム対応がとにかく苦手です!いい対応方法があれば教えてください!
そんなtomokoさんのために、元ホテルの支配人で10年以上サービス業に携わってきた自分が、ホテルマン流のクレーム対応術を教えますね!
ホテルマンのクレーム対応術|パターン別NG対応&OK対応5選
元ホテルマンであり、10年以上サービス業に携わってきた自分が、クレームのパターン別にNG対応とOK対応を解説します。
クレームが苦手という人のほとんどは、クレームについての対応術を知らないまま対応しています。
野球のルールを知らないままバッターボックスに立つようなもので、ボールが飛んできても何をしたら良いかが分かないのです。
クレームの対応のポイントは「お客様の気持ちに寄り添った対応」と「パターン別の対応方法」を知ること。
お客様の気持ちに寄り添った対応ができないと失敗しますし、仮に寄り添っていても対応方法が分からなければ同じく失敗します。
しかし逆に言えば「お客様の気持ちに寄り添った対応」と「パターン別の対応方法」を知っていれば、クレーム対応は何も怖くないのです。
では、前置きが長くなりましたがホテルマン流のクレーム対応術を解説しますね。
訴えると言われた場合
お客様にクレームで「訴えるぞ!」と言われた場合は、まず本当にお客様が訴えるつもりなのかよく考えてください。
一般的に訴訟を起こす場合、まず訴状を裁判所に提出する必要があります。
裁判所に受理されて被告にも訴状の送付が完了したら、口頭弁論期日の指定と呼び出し。
その後答弁書の提出、送付、受領が終わったらようやく審理に入ります。
これほど面倒な手順を踏んでまで、お客様は本当に訴訟を起こしたいのでしょうか。
お客様に訴えると言われた場合のOK対応術は以下の通り。
お客様が訴えたいと仰るほど、
お怒りだというお気持ちが伝わって参ります
お客様は本当に訴訟を起こしたいのではなく、「訴訟を起こしたいほど怒っている」のです。
お客様の気持ちに寄り添った対応を考えると、こう答えるのがベストですね。
逆にお客様に寄り添っていない、NG対応は以下の通り。
それだけはどうかご勘弁ください
これはクレームに対してではなく、「訴訟」に対して勘弁してくれと言っています。
要は訴訟を起こされると企業のブランド力が落ちるので、それを避けるために謝罪しているだけ。
つまり保身のための謝罪ですね・・・
これではお客様から「訴えられたくなかったら〇〇してよ」と新たな要求を出されるだけです。
また、もう1つ勘違いしがちなNG対応が以下の通りです。
私共はお客様がなさることに対し、
どうこう言える立場ではございません
問題なさそうな対応にも見えますが、これも「お客様の気持ちに寄り添った対応」という点から見ればNG対応。
なぜなら、お客様に対して少しバカにしたような態度を取っているからです。
「どうせアンタは何もできないでしょ」という考えがお客様に伝わるため、慇懃無礼かつ事務的な対応といえます。
加えて、お客様に反論(敵対)する形になっているのも問題です。
クレーム対応で「言い訳」と「反論」をしないのは、基本中の基本。
ただし、クレームではなく不当要求の場合に限り、上記の対応は有効です。
不当要求に対しては、クレーム対応とは違う「毅然とした対応」が求められます。
不当要求については以下の記事で解説していますので、よろしければこちらもご覧ください。
責任者を要求された場合
いきなりお客様から責任者を要求された場合、まず絶対にしてはいけないのは「すぐに責任者を出すこと」です。
じゃあ不在ってことしちゃいましょう!
tomokoさんのように責任者を出さないために「不在」と伝える方もいますが、残念ながらこれもNG対応。
あいにく責任者は不在でして・・・
じゃあすぐに電話して、出たら私に代わって!
こうなることは目に見えています。
しかもクレームの争点が「責任者を出すか出さないか」に変わってしまうため、悪手でしかありません。
え、でも責任者を出すのはNGですよね?
責任者を出すこと自体はNG対応ではありません。
いきなり「責任者を出せ!」とお客様から言われ、言われたとおりにホイホイ責任者を出すのが問題なのです。
責任者を出す条件は、責任者が事前に状況を完璧に理解した状態かつ、責任者が出ることで確実に問題が解決する時だけです。
クレームに対し、誰が対応するのかはお客様ではなく企業側が決めることですよね。
クレームを言うために「マーク・ザッカーバーグと話をさせろ!」といったところで、話ができるはずありません。
では、OK対応はどうするのでしょうか。
これも「お客様に寄り添った対応」を前提に考えると、以下のように回答するのがベストです。
ご不便があったようで申し訳ございません。
責任者に報告いたしますので、詳しくお話をお聞かせ願えませんか?
ポイントは、まず「責任者と話がしたいほど不愉快なことがあった」ことに対し、限定的に謝罪をすること。
限定的な謝罪はクレーム対応の基本で、「迷惑をかけた事実に対して」謝罪します。
さらにメモを取り出し「必ず責任者に伝えますよ」「あなたの話を真剣に聞きますよ」という姿勢を見せましょう。
お客様は「責任者と話がしたいほど不愉快なことがあった」のです。
まずはその気持ちに寄り添った対応を心がけましょう。
ちなみに、自分がホテルマン時代に会社からの指示で使っていた別の対応術もあります。
それは「この時間帯の責任者は自分です」と言って対応することです。
しかし自分の経験上、「時間帯の責任者」や「現場の責任者」というワードを出して対応しても、結局「もっと上を出せ」と言われてしまうことが半分くらいの確率であります。
「責任者は?」→「時間帯の責任者が私です」→「もっと上を出せ」→「できかねます」と対立する形になることが多く、こうなるとクレーム対応としてはNGです。
さらに「上司も私と同じ意見です」と粘ると、「部下に任せて自分は逃げるのか」と上司に矛先が向く可能性もあります。
役職が入った名刺を出せばまだ説得力はありますが、名刺もなくただその時間で一番先輩だからという理由で対応するのはオススメしません。
同業他社と比較された場合
同業他社と比較された場合のNG対応は、「私どもではできかねます」と言って対応を終えることです。
お客様の中には、よく同業他社と比較して自社の弱みを突いてくる人がいます。
だからといって、せっかくの要望に対し「私どもではできかねます」の一言で終わらせてはいけません。
同業他社と比較するということは、裏を返せば「自社の商品やサービスに興味がある」ということです。
そうでなければ、何も言わずに同業他社に行けば済む話でしょう。
せっかく自社に興味があるお客様に対し、「ウチが不満ならそっちに行ってよ」と言わんばかりの対応は、お客様の気持ちに寄り添っていない対応と言えるのです。
この場合のOK対応術は、以下のようになります。
〇〇ホテルは朝食が無料なのに、お宅は有料なのね!
ご期待に応えられず申し訳ございません
私どものホテルは必要な方にのみ、
必要なサービスを提供するスタイルでございます
初めから朝食料金が宿泊料金に含まれていない分、
リーズナブルにお泊りいただけます
ご朝食を希望される場合でも、
前日までにお申し込みいただければ、30%割引いたします
ポイントは「指摘された部分は謝罪しつつ、それを上回るメリットを伝えること」です。
上記の例では、朝食無料のホテルは朝食を食べない人にとってはデメリットがある部分を伝えつつ、それを上回るメリットを上手く伝えています。
朝食が無料のホテルでも、結局は宿泊料金に朝食料金が含まれている…
朝食を食べない人にとってはムダな料金を払うだけですね
「普通車と比べて軽自動車はパワーがない」と言われて「じゃあ普通車に乗ってください」と言うのではなく、「その分燃費が良くて小回りも効きますよ」と答えるのです。
弱みやデメリットは認めつつ、それを上回るメリットを伝えることで、クレームをチャンスに変えられることを覚えておきましょう。
話が堂々巡りする場合
お客様の話が堂々巡りする場合、やってはいけないNG対応が「話を聞くこと」です。
ご年配の方によく見られるケースですね。最初はクレームかと思って話を聞きますが、実は中身のない世間話でひたすら話が堂々巡りをする、というケース。
自分もホテルマン時代に宿泊客から部屋に呼び出され、よく分からない話を聞かされ続けたことがありました。
経験上、我慢して聞き続けても事態が好転することはありません。
この場合のOK対応は以下の通りです。
お客様、改めてお伺いしますがどういったご用件でしょうか?
基本的にお客様の話は最後まで傾聴する必要がありますが、このパターンに限り途中で話を遮っても構いません。
改めて用件を聞いたにもかかわらず、再度訳の分からない話が続くようであれば強制的に終わらます。
恐れ入ります。
他のお客様もお待ちですので失礼いたします
これでOKです。
自分はホテルマン時代、この対応で何度も強制的に話を終わらせていますが、それで文句を言われたことはありません。
もしかしたら、お客様はただ話がしたい可能性もあります。
だからといって、サービスや商品に関係のない話を必要以上に話を聞くのは間違いです。
「お客様の気持ちに寄り添っていない」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
執拗に従業員を拘束し対応させる行為は、業務妨害罪になる可能性があるためです。
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の業務を妨害すること(偽計業務妨害罪)。または威力を用いて人の業務を妨害すること(威力業務妨害罪)を内容とする犯罪である。
信用毀損罪・業務妨害罪 – Wikipedia
上記にある「威力」とは、暴力などの直接的な行為でなくても、執拗なクレームやSNSへの書き込みなども該当します。
また「毎日無言電話をする」なども業務妨害罪になる可能性があり、実際に悪質な無言電話が原因で逮捕されたケースもあります。
話が堂々巡りして埒が明かない場合に限り、会話を遮って終わらせても問題ありません。
あなたには他に対応すべきお客様も、やるべき仕事もたくさんあるはずです。
とにかくゴネる場合
こちらが提示した解決策に応じずひたすらゴネられる場合、やってはいけないNG対応が「要望に応じる」ことです。
クレームで100%企業側に非がある場合でも、「出来ること」と「出来ないこと」が必ずあります。
企業側で「精一杯出来ること」を提示したのであれば、それで応じてもらうしかないのです。
もし企業側が折れて「出来ないこと」を出来ると言ったとしても、事態はかえって悪化します。
お客様から「じゃあ始めからそうしろよ!」と言われるばかりではなく、下手したらもっと過剰な要望を言われるかもしれません。
大切なのは、「なぜこの解決策になるのか」を、お客様に分かりやすく伝えること。
そのためには、「理由」「根拠」「事例」の3つをお客様に伝えることが重要です。
提示した解決策になる「理由」とその「根拠」を説明し、過去にも同じ解決策を提示してきた「事例」を伝えます。
お客様が「この解決策が企業に取って最上級の解決策」と理解すれば、応じてくれます。
それでも要望に応じず、金銭などを要求してくる場合は「不当要求」に該当します。
不当要求はクレームではありませんので、毅然とした態度で対応しましょう。
まとめ
ここまで元ホテルマンの自分が経験をもとに、パターン別のクレームNG対応とOK対応について解説してきました。
クレーム対応のポイントは「お客様の気持ちに寄り添うこと」と「パターン別の対応方法を知ること」です。
お客様の寄り添う気持ちと、パターン別のクレーム対応方法を理解していれば、もうクレーム対応は怖くありません。
これでクレーム対応は怖くありませんね!
あとは実践あるのみです!